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クリムゾンダーク 第7巻



クリムゾンダーク

第7巻


著者

ゴールドを集める者




暗殺者の足跡は森のさらに奥へと続いていた。エスラエルが先頭に立ち、アルゴニアンとボズマーがすぐ後に続き、絡まった茂みと緩んだ泥の中を進んだ。エスラエルが屈んで足跡を確かめると、ジャズベイのほのかな味が舌に漂ってきた。魔術師には説明不可能な「夜眼」の副作用だ。


その足跡は大きな樫の木の辺りで止まっていた。まるで足跡の主が立ち止まり、逃げ方を考え直したかのようだった。顎の先端を指でなぞりながら、エスラエルは仲間の山賊たちの足音に耳を傾けた。振り返るわけにいかなかった。暗殺者が近くにいるのだから。


数時間前、その夜は乾杯と共に始まった。配達人から、台地やゴールドコーストの仕事で入手した商品到着の知らせが入っていた。ステンダールが施しを与えてくれるのは、衛兵と東帝都社が彼らの事業の壊滅を企てて以来、数ヶ月ぶりのことだった。糸口を失ったクリムゾンダークは、キャラバンの襲撃やつまらない窃盗を余儀なくされていた。進んでやっているようでいて、あまり気の乗らない類の仕事だった。


しかし今回の知らせで、金庫は杯と同様に満たされた。デイドラ教団が隠し持っていた宝を入手できただけでなく、アンヴィルでは魔法の剣、コロールではコロヴィア毛皮、絹、高級ローブや香水が大量に入った倉庫を襲撃できた。


商品の合法化を狙って、山賊たちはダンマーの書記キャシヴァルに率いられ、シロディール中に人脈を持つ商人の貴族と接触した。彼らはその夜、一杯のワインとご馳走を嗜みながら盟約を結んだ。この悪党とはみ出し者の集団にとって、自分たちより身分が高い人物に取引を認められたことは画期的な出来事だった。


その瞬間は、クリムゾンダークの終焉など永遠に訪れないように思われた。だがキャシヴァルが負傷し商人が死んだ今、ほとんど避けられない事態のように思われる。


「足跡はここまでだ」。エスラエルがそびえ立つ樫の木の幹を指して言った。


「木に食われたのかもな」。ボズマーがそう皮肉を言うと、アルゴニアンの相棒である青白き目が後に続いた。


「冗談だろう、エーリエル」。青白き目が答える。「だがこの者の村には、魔法によって堕ち、子供をさらって食べるヒストの木の話がある」


「そうか。なら聞かせてもらうが」。ボズマーが答える。「子供を食べる怪物の話はなんでこんなに多いんだ? 子供を脅し続けないと言うことを聞かせられないほど親が無能なのか、あるいは子供はそんなに美味いのか?」


「お前はボズマーだろ」。アルゴニアンが言い返す。「それについてはお前の方が詳しいんじゃないか」


「2人とも静かにしろ」。エスラエルが警告する。「奴がいるぞ」


エスラエルにはわかっていた。冗談を言っている場合ではない。口の中でジャズベイの味が薄まっている。まもなく夜眼が失われそうだ。呪文が切れてしまえば、突如暗闇へと放り込まれてしまう。


このことは暗殺者も把握していた。呪文の残り時間を数え、大木が月光を遮る場所へと彼らをおびき出したのだった。自分の目の光はまだ消えないとわかった上で、追跡者たちの目の儚い光に賭けていた。夜に目を奪われたアルトマーが、手を挙げて最後のマジカを使って呪文を唱え直すに違いないと踏んだのだ。そして次の瞬間、暗殺者は襲いかかった。


鎧の継ぎ目を切り裂こうと、暗殺者の短剣がエスラエルの首元を襲った。暗殺者にはわかっていた。エルフの左手は呪文の詠唱のためにふさがっているため、むき出しの動脈を守ることはできないと。そしてエルフが倒れれば他の2人もその死体を見て気を取られるため、軽々と殺せるだろうと。つい数時間前、彼らが守れずに死んでいったあの商人のように。とても理論的な考えだと思われた。


だが標的まであと数センチというところで、短剣が凍り付いた。暗殺者は振りほどこうとしたが、その短剣はアルトマーの拳に固く握りしめられていた。


作戦だったのだ。エルフは手を挙げたものの、呪文を唱えなかった。


暗殺者は短剣を落として飛び退いたが、アルトマーの手を少し傷つけただけで居場所を明かした。エスラエルたちは取り押さえようと急いだが、暗殺者は速かった。残りの短剣で自分の首を切り裂き、主人の秘密を墓場へと持って行った。


「誰がボスに説明する?」エーリエルが場を和ませようと皮肉を言った。「責任を追及できそうな人物が30人ぐらいいるが」


「この失敗はどんな言葉を使っても正当化しようがない」。エスラエルが傷を覆いながらぼやく。「商人も人殺しも失った。その上キャシヴァルは負傷してる。とは言え、死体を調べれば何かしらわかるかもしれない」


「これほどの暗殺者だ…」青白き目が言う。「おそらく東帝都社の一員だろう」


「その程度じゃ済まない」。エスラエルが鎧の切り口を確かめながら言う。「あの商人は、山賊だけじゃなくサルモールとも取引していたようだ。なぜなら、我々が殺したこの男は東帝都社の一員じゃない。奴はスペクターだ」


エーリエルはこの言葉に顔を曇らせた。これまで街の衛兵、東帝都社、クランマザーや、モロウウィンドの大家まで敵に回してきたが、今回は全く話が違った。


彼らが恐れていたものは敵の規模や強さでなく、その知識だった。ペニトゥス・オクラトゥスは最上位の密偵だった。帝国が商人の取引を追跡していたのなら、彼らの素性が暴かれ、すべての敵の間で共有されてしまうのは時間の問題だ。


唯一の問題は、どれだけの時間が残されているのかということだった。



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