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クリムゾンダーク 第6巻



クリムゾンダーク

第6巻



著者

ゴールドを集める者




エドワードがアントニウスにエルスウェーアで習ったゲームを教えていると、キャシヴァル、エーリエルとザハリアもテーブルに加わった。ありとあらゆる色のワインと酒で汚れた布が板の上に敷かれていたので、そうでもしなければささくれている天板で骨とタイルを滑らせた。翻訳の途中でルールの一部は失われたが、エドワードはゲームを機能させられる程度に分かっていた。さらに彼がそのルールを都合よく変えても、相手には分からなかった。


「ゲームには2種類ある」エドワードが説明しながら、タイルを場に並べた。「完全情報型と、不完全情報型だ。例えばチェスは完全情報型のゲームだ。互いの駒と盤上の配置が分かる。一方、カードゲームは不完全情報型だ。価値の決まったカードを配られ、できる限りの手を尽くし、誰が有利なのか探り出さねばならない」


「で、お前はどっちを好むんだ?」とキャシヴァルが尋ねた。


「誰の何を相手にしているか分かるほうが好みだな」と、エドワードは答えた。「とは言っても、情報が不完全なゲームをたしなむほうが実用的なのは承知している。結局、私たちを取り巻く世界はそうやって動いている」


「人生がゲームだとは知らなかった」とエーリエルは言った。「もしそうなら、もっとうまくイカサマをやる手を見つけ出さないとな」


「謙遜するな」とエドワードが答えて、またも賭け金をかき集める。「お前はうまくやってるさ。アントニウスはそうもいかない」


「負けたのはお前が邪魔したからだ」とアントニウスが吠えた。「鼻で吸って吐くあれのせいだ」


「呼吸のことか?」エドワードが尋ねる。


「そう、それだ」


他者に関する詳細な研究として、キャシヴァルはエドワードの話の骨子を理解した。顔が大っぴらにひけらかすものの影には、幾つもの層が隠されている。例えば、エドワードは魅力と知性を剣のように使い、狡猾な振る舞いには敵を武装解除する役割がある。一方、エーリエルはユーモアを鎧のように着て、感情や動機の片鱗すらつかませない。ザハリアはまっすぐで、情熱的かつ誠実で、短気のせいで損をすることが多かった。アントニウスですら、酒浸りであっても腕の立つ悪たれ魔術師だ。時々、彼が酔ってるのは単に最悪の衝動を大目に見てもらうための演技ではないかという気もする。


組織全体にも同じ法則を当てはめられる。山賊のことが知られておらず、情報が不完全であるほど、生存のチャンスは増す。敵は常にいいカードを持っている。勝つために唯一の手段はブラフしかない。


だからこそ、キャシヴァルはこの前の仕事に不安を覚える。彼らは倉庫のそばの建物を買い、トンネルを作って潜入し、品物を盗んだ。作戦は完璧で、たんまりもうけはしたが、その標的のため、仕事が終わった今でも彼は胸騒ぎを覚えている。結局のところ他の企業と違い、東帝都社は機械のように最後の1枚までコインを数え、全ての品物を1グラムまで測る。従業員は几帳面で、会計士は注意深い。そして台帳は整然としている。彼らはどの品が盗まれたか正確に特定し、窃盗の時刻と手口を徹底的に調査する。


それゆえに、倉庫の隣の建物を買った偽造屋が最後の手紙に返事をよこさないことが彼の心に重くのしかかっていた。キャシヴァルは心配した親戚のふりをして書状をしたためた。偽造屋から足がついては困るから、秘密をもらしはしなかった。他の心配の種は、東帝都社が付近の衛兵隊長の助けを求めて、情報を共有しようとしているという報せだ。守りが固くなれば、キャラバンから略奪するのも難しくなる。そして商人たちへの監視が強化されれば、密売もずっと難しくなる。結果的には東帝都社襲撃に成功したが、彼らはカードの一部を明かしてしまった。


「青白き目が歌えるって知ってたか?」エーリエルの言葉にみな驚いた。


「冗談だろ?」ザハリアが幾分驚いて尋ねた。


「本当だ。そこらの吟遊詩人よりうまいんだ」と、エーリエルが答えた。初めて真顔になって続けた。「信じてくれ。あれほど衝撃的なことはなかった。アルゴニアンがあのような音色を出せるだなんて考えたこともなかった、しかも音階も完璧だ」


キャシヴァルは内気なアルゴニアンがメロディーにのってリュートをかき鳴らす様を想像して笑った。他の者について全てを知り尽くしたと思っていてもなお、彼らは奇妙で興味深いやり方で驚かしてくれる。恐らく、彼らが直面している困難についても同じことが言えるのだろう。自由である限り、追跡者がどんな情報を持っていようと、それでも不完全なのだ。


山賊たちはすでに彼らのカードの多くを公にしたが、まだ全てのカードがバレていないと願おう。



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