top of page

クリムゾンダーク 第4巻



クリムゾンダーク

第4巻



著者

ゴールドを集める者




酒場は静寂に包まれた。キャシヴァルは機嫌を伺うように若きボズマーへ目をやった。このボズマーはつい数時間前に、人生最大の冒険へ乗り出したところだった。従者を戦士に変え、少年を男に変える類の大冒険だ。


「それで、彼女はなんて?」キャシヴァルは若き山賊に尋ねた。


「結婚する条件として…」ファスリスは言った。「竜の鱗を持ってきてほしいって」


酒場は笑いに包まれ、常連客たちはジョッキを机に叩きつけた。


「何?」ファスリスが明らかに困惑したように答える。「何がそんなに面白いの?」


「悪い悪い」。キャシヴァルが言う。「だがそれはつまり、断られたってことだな」


ファスリスは落胆した。ほとんどありったけの勇気を奮ってザハリアに愛を告白したのだ。その若き体にどれだけの防御が残っているのかキャシヴァルには判断しかねたが、たった今受けたこの攻撃に耐えられる見込みは薄そうだった。実際、ファスリスは見る見るうちにうなだれ、ついには人間というよりグアルのような見た目になってしまった。哀れに思ったキャシヴァルは、自分が初めて恋に敗れたときの話をして少年の自尊心を慰めようとしたが、そこで部屋の向こうから聞き慣れた声が聞こえてきた。


「竜の鱗と言ったか?」


アントニウスはあまりにも四六時中酒場にいたため、酒場にいたことに気づいていた者は一人もいなかった。その山賊の魔術師は夕暮れから夜明けまでふらついた様子で椅子に座り込み、酒という酒を一人きりで飲み干していた。アントニウスはそのうち背景に溶け込み、見知らぬ者だけが嗅ぎ取れる匂いと化していたのだった。


「九大神にかけて、どこにあるか知ってるの?」ファスリスが身を乗り出して顔を輝かせた。ついさっきまで暗い表情だった顔に、生命力が戻ったようだった。


「私は魔術師だぞ」。アントニウスはそう言って、大きくげっぷをした。


「山賊の魔術師だろ」。キャシヴァルが遮る。「あんたや職業には敬意を表するが、助けになるとは思えないな」


「何言ってるんだ、キャシヴァル」。魔術師が叱りつけ、一人で勝手に転びそうになりテーブルに座り込む。「少年が竜の鱗を必要としてるんだろう。私が探すのを手伝ってやろう」


「だが竜はもうはるか昔に絶滅したはずだ」と、キャシヴァル。


「お前は本当に落第生だな」。アントニウスがダンマーの額に指を押し付けて嘲る。「道理でタイラがお前じゃなくエドワードをえこひいきするはずだ。少なくともエドワードはちゃんと話を聞いてる」


「すまんな、魔術師」


「お前を許すことができるのは神々だけだ。この酒を飲めば神々の元へと行けるぞ」


「竜の鱗の話は?」ファスリスがじれったそうにつぶやいた。


「そうだったな。ちょうど、ウルフニル・ボーンスキンという戦士に関する古いノルドの伝説がある」。アントニウスが唾をまき散らしながら説明する。「ウルフニルは蛇の竜ヴィスレルナアクを倒し、その鱗から強力な鎧を作り出した。ウルフニルが死んだ時、恩知らずな弟子たちにその鎧を譲ることはせず、誇りある戦士として自らと共に埋めた」


「そりゃ残念な話だ」。キャシヴァルが、この暴走馬車を脱線させようとして言った。「とっくに墓荒らしに横取りされてるだろうな」


「だと思うだろう」。アントニウスがわけもなく声を荒げて叫ぶ。「だがな、ヨルグリム高台近くにある塚にはウルフニルの亡骸が出没し、鎧を盗もうとした者どもを殺すという噂だ」


「なるほど! じゃあ挑めばいいんだね!」ファスリスが大声で言う。「ウルフニルの鎧を身にまとうには、まず戦士としてウルフニルに勝たないといけないんだ!」


「それか、どこの馬の骨ともわからんような奴には身に着けてほしくないのかもしれないな。私がお前の下着を着て、お前の家に現れたらどう思う? だが、そうだな。ウルフニルを殺せば竜の鱗が手に入る。竜の鱗が手に入れば、その売女も手に入る」


「売女なんかじゃない。ムンダスで一番の人だ。これで結婚できるぞ!」


「ああ。好きにしろ」


希望に胸を膨らませるファスリスを見て、キャシヴァルは深いため息をついた。唯一の救いはウィンドヘルムが数千リーグ離れていて、ファスリスはまだ子犬だということだった。ファスリスの準備ができる頃には、タイラと一言二言交わせば遠くまで連れて行ける可能性はあったが。何にしろ、一時的な解決策しか思いつかなかった。キャシヴァルはもう何度もファスリスのこの表情を見てきたため、次に何が起こるかはわかりきっていた。


2週間後、キャシヴァルは酒場に戻った。普段とほとんど変わらぬ様子だった。女たちが常連客の世話をし、常連客たちはストレスを発散していた。吟遊詩人たちが新旧の物語を歌い、飲んだくれたちが歌詞もわからぬまま一緒になって歌っていた。アントニウスはいつものように両手に酒瓶を持って隅に陣取り、床には酒瓶がさらに転がっていた。


それは普段と変わらぬ金曜だった。キャシヴァルの隣の席が空いていることを別にすれば。


朝になったら、タイラに知らせなければ。あのボズマーはもう帰って来ないと。



bottom of page