クリムゾンダーク 第2巻
クリムゾンダーク
第2巻
著者
ゴールドを集める者
クリムゾンダークの規模は結成の翌年に3倍以上となり、その人数は今や15人となっていた。
タイラ・ブラッド・ファイアは、帝都でヤクトゥというオークの鍛冶屋を見つけた。狡猾な魔闘士も雇った。ブレトンの双子であるエルワンとエドワードだ。エルスウェーアでは、有能に成長したコソ泥のエムシャラに出会った。ウッドエルフの射手であるファスリスとエーリエルもいた。片方はとてもロマンチストで、もう片方は年甲斐もなく皮肉屋だった。忠実で誠実なアルゴニアンのペールアイズや、生まれながらの指導者であるレッドガードのザハリアもいた。そして最後に、オークの戦士ウルグノク、ノルドのスコールとビョルムンドを用心棒として雇った。その肉体は彼らの祖先の氷のように屈強だった。
これだけのメンバーが揃うことで、クリムゾンダークは主要ギルドに匹敵するほどの本格的な組織となっていた。ブルーマからデューンまで仕事をこなし、倉庫を荒らして農場を襲っていた。次々と戦利品を手に入れたタイラは、クリムゾンダークの影響力がタムリエル中へと及び、影で商売を営む人々から恐れ崇められることを望んでいた。
だが山賊だった彼らは、何よりもまずキャラバンの略奪を中心としていた。街道や大通りに忍び寄り、荷物が満載の馬車を見つけて、その荷を素早く奪い取った。この仕事にはカジートのエムシャラが最も適任だった。その目は車輪の回転具合や泥に刻まれた轍から、重い荷を積んだ馬車を特定できた。肩の落ち具合や足取りの重さから疲れた衛兵を見つけることもできた。その目は他の者がたいまつの光に従っている中、真夜中でもはっきりと見抜くことができた。
力については頼りなかったものの、他の山賊たちと支え合っていた。
しかしある夜、ほとんど抵抗してこない相手に出くわした。僧侶や司祭など、神に身を捧げる者たちばかりだったのだ。彼らが襲った馬車は聖堂に向かっていたもので、ゴールドではなく捧げ物ばかりが積まれていた。
「こんなものをタイラが気に入ると思う?」馬車の後ろから顔を出したエムシャラは、耳からタロスのアミュレットをぶら下げながらそう尋ねた。
「山賊には神も祈りも必要ない」。ウルグノクが両手斧についた血を拭いながらぼやく。「ひどい贈り物だ」
「くだらない」ビョルムンドが木箱を降ろしながら反論する。「ノルドはみんなタロスが大好きだ。ハチミツ酒と同じぐらい!」
「お前ならもちろんそう言うだろうな。霜でも舐めてろ」ウルグノクが怒鳴った。「マラキャスに誓って、タイラはおまえら馬鹿とは違う。タイラは趣味がいい」
タイラがただのノルドだったなら、ウルグノクが自分の斧を差し出すことは決してなかっただろう。ウルグノクにとって、ノルドは顔が青白く詩ばかり詠み、指で物を食べ、角から酒を飲む巨人にすぎなかった。しかしタイラは他のノルドとは考えも感覚も匂いも違い、何より戦い方が違った。臆病者のハチミツ入りの飲み物よりも刺激的なスジャンマの瓶を好み、あらゆる形式の詩を軽蔑していた。ウルグノクはタイラがモロウウィンド出身かもしれないと考えていたが、オークは他人を詮索しなかった。
「そうなの?」エムシャラが悪戯っぽい笑みを浮かべて言う。ピンと立った耳でアミュレットが揺れている。「じゃあタイラに何を渡すつもり? ウルグノク」
「は? 何も渡す必要はないだろ」オークは冷たく答えた。「どうせ1年後にはみんな死んでいる」
エムシャラはその言葉に青ざめた。オークの発言がただの冗談なのか、あるいは予言なのか判断できなかったのだ。ウルグノクは魔術師ではなかったが、黒魔術に手を出していることで知られており、体には部族の傷跡やあざがあり、首には骨のトーテムを着けていた。鍛冶屋のヤクトゥと違い、ウルグノクの怒りは単なる荒い気性によるものではなく、もっと個人的な深い事情から生じているもののようで、その怒りがすべての会話に滲み出ていた。ウルグノクの発言に全員が黙り込んでいたところ、若きボズマーが口火を切った。
「そう言えば、休日のために何か欲しい物はあったかな? ザハリア」ボズマーが、その柔らかな茶の肌をバラのように赤らめてつぶやいた。しかしレッドガードは気にもかけず、馬車の馬を品定めしていた。
「サチュラリアの贈り物をくれるつもりなら…」ザハリアは馬車の側面に刺さった矢を指して言った。「もっと腕を磨いて。あなたが木の板以外のものも倒せるようになったら、少しは安心できるわ」
「まあまあ」エムシャラが口を挟む。「生や死なんかよりももっと大事な問題があるよ。このカジートは、まだタイラにふさわしいプレゼントを手に入れれてない」
「心がこもった物であれば…」ファスリスがレッドガードを見つめて言う。「アミュレットで十分かと」
2週間後の寒いサチュラリアの夜、タイラ・ブラッド・ファイアはパチパチと燃える炎の音に目を覚ました。個人用の金庫の上にメモが置かれており、中には布にくるまれたアミュレットが入っていた。寛大さと腕の証として、あのカジートがタイラの部屋に忍び込み、贈り物と炎を残していったのだった。
タイラは元々信心深い性格ではなかったが、ぬくもりと赤みがかった光の中で、そのタロスのアミュレットに幾分胸を打たれたのだった。その朝にペラディウスから受け取った、デューンでサルモールに出くわしたという手紙のせいだったのかもしれない。その瞬間、ある考えがタイラの頭に浮かび、すぐにアイデアとして開花した。あくる日タイラは鍛冶屋を自分の部屋に招き、そのアイデアは計画へ成長した。
「このアミュレットをもっと作ってほしい」タイラは斧の形のネックレスを目の前のテーブルに置いてそう言った。
鍛冶屋は秘宝を手に取って品定めし、刻まれた複雑な模様を親指でなぞった。他のアミュレットとは違って素朴なのに華麗で、その刃はくすんだ色を放ち、周囲のロウソクの光を反射もしていなければ、吸収もしていなかった。
「竜の骨と鱗でできているみたい」ヤクトゥは答えた。「近頃はなかなかお目にかかれない代物だけど、レプリカなら簡単に作れるはず。ただ、一体なぜ? 山賊が神々に助けを求めるなんて」
「先週、シルバーロードを通っていた商人のキャラバンが、サルモール司法高官に焼かれた」タイラは言った。「タロス崇拝の疑いで商人を殺したみたい。しかもここだけで起こってることじゃない。ペラディウスからの情報によると、街ゆく人であれ道ゆく馬車であれ、サルモールはこのアミュレットの所有者を全員始末しようとしているみたい」
「馬車か」ヤクトゥが答える。「私たちが襲ってるのと同じ」
「まさに。あのアミュレットは防具でもなければ、宝飾品でも捧げ物でもない」タイラは言った。「あれは“動機”になる。襲ったすべてのキャラバンにあれを置き、略奪が終わり次第馬車を燃やす。そうすれば衛兵たちはサルモールを責め、我々は戦利品を手にする」
ヤクトゥはうなずくと、アミュレットを作るために立ち去った。タイラにはわかっていた。わざわざ秘宝を持っていかずとも、あの鍛冶屋はもう記憶に刻みつけているはずだと。あの鍛冶屋の才能は、他の者とは違っていた。寡黙で浮世離れしていて、飽くことなく仕事に精を出していた。わざわざ口出しせずとも、アミュレットは夜明けまでには出来上がるだろう。
アミュレットを金庫に戻そうとしたタイラは、黄金や宝石の山の中に別の物が横たわっていることに気づいた。それはオークの族長の歯だった。普通は、持ち主を一騎討ちで倒すと手に入るようなものだ。
タイラはそういったオークに心当たりがあった。意図に反して自分の父親を殺すことになった息子のオークだ。傷心の中、息子はその歯を形見の首飾りとして身に着け、将来自分の子供たちを殺さなければならなくなる日を恐れていた。だがある日、オークはあるノルドの山賊と出会った。そのノルドは部族の親族となり、オークに決闘を申し込んできた。
一騎討ちでオークに勝った山賊は、オークの苦しみを知り、族長としての義務からオークを解放した。ノルドはオークの歯を要求せず、来たるべき時に斧を差し出すよう言った。そしてその誓いは、ノルドがクリムゾンダークを結成し、そのオークの元へ戻った時に果たされた。
タイラは当時のことを思い出し、微笑んだ。その歯を抜いたのがウルグノクだとは知らなかったが、タイラは少しも驚かなかった。