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アルゴニアン

Argonian

ヒストの根元で卵から孵る、ブラック・マーシュの鱗の民

アルゴニアン(Argonian)

アルゴニアンは、タムリエル南東部の湿地帯ブラック・マーシュを故郷とする、鱗と尾を持つ種族である。彼らは自らの言葉であるジェル語で、自分たちを**サクスリール(Saxhleel)と呼ぶ。その暮らしの中心には、意思を持つ樹木ヒスト(Hist)**がある。卵を抱く孵化場から死者を送り出す儀礼まで、一本の木と村の人々が、生と死の両端で結ばれている。


ブラック・マーシュとサクスリール

帝国の地図を開けば、モロウウィンドの南にはブラック・マーシュという一つの地方が描かれている。ところが、その土地をジェル語で何と呼ぶか尋ねられたアルゴニアンの歴史家ジー・ラーは、答えに窮した。川も生き物も人々も異なる広大な土地に、一つの名を与えるという発想自体が、彼には自明ではなかったのである。ブラック・マーシュやアルゴニアという呼び名から想像するよりも、そこに暮らす人々の帰属意識は、個々の水辺や集落に深く根ざしている。[1][4]

サクスリールも、同じ姿の人々だけを指す言葉ではない。ジー・ラーによれば、外見の異なる**ナーガ(Naga)**もこの名に含まれる。ブラック・マーシュにはそれぞれに自治を営む部族が数多くあり、同じサクスリールでも、よそ者との交易を歓迎する村もあれば、周囲の勢力から距離を置く村もある。


水中呼吸と湿地での暮らし

アルゴニアンは陸上でも水中でも呼吸できる。道が水に沈めば引き返すしかない旅人にとって、沼地は行く手を阻む障害となる。水面下でも息を継がずに進める彼らには、同じ場所が通り道になりうる。毒を持つ動植物や深い水路に囲まれたブラック・マーシュでは、土地を知る住民と侵入者の間に、このような差がいくつも生まれる。


『The Elder Scrolls V: Skyrim』では、この身体的特徴が種族能力にも表れている。アルゴニアンは水中呼吸を常時行え、疾病に対して50%の耐性を持つ。また、固有能力「ヒストスキン(Histskin)」を使うと、60秒間、体力の自然回復速度が通常の10倍になる。


ヒストと卵、魂の帰る場所

多くの集落ではヒストの近くに孵化場を設け、卵の世話をする者が次の世代を見守る。木は村人に樹液を与え、その意思を受け取って解釈する役目を担う者もいる。アルゴニアンがヒストに耳を傾けるという表現には、祈りを捧げることと、身近にいる別の知性から意志を伝えられることの両方が含まれている。


それでは、ヒストとの結びつきを失った土地で、卵や死者はどこへ託されるのだろうか。ゲーム内書籍『Wisdom of the Tides』には、卵を暖かな砂の浅瀬で孵す島の人々が登場する。卵を守るノキは、人にはそれぞれ、いつか身にまとうべき鱗があると語る。そこへたどり着けずに命を終えた者には、潮がもう一度、道を歩む機会を与えるという。著者ヘイタ・ミーンがこの信仰に触れて思い浮かべるのは、自由を手にする前に命を落とした、かつての奴隷仲間たちである。


部族の手仕事と古代ザンミーア

南岸のマークマイアに暮らす**ブライトスロート族(Bright-Throats)**は、音楽や踊り、木彫りの技で知られる。なかでも珍重されるのが、動物や卵、ときには幼いアルゴニアンをかたどった小さな彫り物だ。護符としても美術品としても求められ、米粒ほどの小品まである。部族を訪ねた旅行者は、琥珀をはめ込んだ小さな亀を買い求めた。作者の説明では、亀は強い力を備えながら、なかなか手に負えない存在なのだという。


同じ地方の湿地には、古代のアルゴニアンが築いた巨大な石造建築**ザンミーア(Xanmeer)**が残る。『The Elder Scrolls Online』のマークマイアでは、現在の村と古代遺跡の双方を訪ねられる。旅人が村で手に取る小さな木彫りも、遠くから見える石造の遺構も、ブラック・マーシュの人々が後世に残した仕事である。


シシスと影鱗

アルゴニアンの宗教と歴史には、ヒストのほかに**シシス(Sithis)**も登場する。その名がとりわけよく知られるのが、**影鱗(Shadowscales)**の伝統である。「影」の星座のもとに生まれたアルゴニアンを闇の一党に預け、幼いころから隠密と暗殺の技を教えるというものだ。[9]

ゲーム内文書『Beware the Shadowscales』で興味深いのは、書き手が影鱗の暗殺術以上に、彼らとブラック・マーシュの社会との結びつきを警戒していることである。誰が標的を決めているのか、報告者自身も突き止めていない。影鱗についての貴重な記録であると同時に、彼らを敵に回した側が何を恐れていたかを伝える文書でもある。


ダンマーとの対立とエボンハート・パクト

北方のモロウウィンドでは、ダンマーの奴隷制のもと、多くのアルゴニアンが自由を奪われた。とりわけドレス家はその歴史に深く関わっている。後に指導者となるヘイタ・ミーン自身も、かつてドレス家に隷属していた。


第二紀572年、アカヴィリの軍勢が侵攻すると、ヘイタ・ミーンの率いるアルゴニアンが参戦し、ノルドやダンマーとともに戦った。この共闘は**エボンハート・パクト(Ebonheart Pact)**成立の礎となった。かつて奴隷とされた者たちが、かつての支配者の隣に立って戦ったことに、この同盟の歴史的な重みがある。ただし、パクトに加わったのは主としてブラック・マーシュ北部の一部の部族であり、南岸を含むすべての共同体が同じ旗を掲げたわけではない。


オブリビオンの動乱から第四紀へ

第三紀末のオブリビオンの動乱には、ブラック・マーシュ側から語られる有名な逸話がある。公式小説『The Infernal City』のアルゴニアン、ミーア・グリムによれば、門が開いたとき、戦士たちはそこを通って逆にオブリビオンへ攻め込み、メエルーンズ・デイゴンの配下に門を閉じさせたという。グリムはその功績をアン・ジーリール(An-Xileel)に帰している。対して友人のアナイグは、マーティン・セプティムが命を捧げたからこそ世界は救われたと応じる。同じ動乱でも、帝都で何が起きたかと、故郷を誰が守ったかでは、人々が記憶する英雄は異なる。


第四紀初頭、レッドマウンテンの噴火でモロウウィンドが大きな被害を受けたのち、アルゴニアンの軍勢は国境を越えて北上し、モーンホールドにまで攻め入った。ダンマー側ではレドラン家が抵抗を組織する。第二紀には共通の敵に対して成立した両者の同盟も、時代と国境を越えて続く恒久的な和解ではなかった。


『スカイリム』で出会うアルゴニアン

第四紀のウィンドヘルムでは、城壁の外の港にアルゴニアン労働者の共同住居がある。そこで働く**湿地帯の斥候(Scouts-Many-Marshes)**には、賃金についての悩みがある。雇い主がノルドとアルゴニアンの労働に同じ額を支払おうとしないのだ。主人公は彼の話を聞き、待遇を改めるよう雇い主に掛け合うことができる。


彼には、ノルドとダンマーとアルゴニアンが、もう少し仲良く暮らせたらという願いもある。国境をめぐる長い争いを知ったあとで彼に会うと、「アルゴニアンの歴史」はブラック・マーシュの中だけで完結しないことが分かる。遠く離れた北国で、ともに働く人々の境遇を良くしようとする港の労働者もまた、その歴史の中に生きている。

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