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秘術師ガレリオン

書籍概要

『秘術師ガレリオン』は、後に魔術師ギルド初代大賢者となるヴァヌス・ガレリオンの若き日々を描いた人物伝である。生まれた時の名はトレシュタス。彼はサマーセット島において、小貴族ギャナッセ卿に仕える農奴として過酷な幼少期を送っていた。


本書で特に印象的なのは、知識そのものが支配階級によって制限されている社会構造である。読み書きのできる農奴を危険視したギャナッセ卿は書店や教師を排除し、学問を特権階級だけのものとして独占していた。トレシュタスの父はその禁忌を破り、密かに文字を学び、息子へ知識を伝えたことで命を落とす。後にヴァヌス・ガレリオンが掲げる「知識は広く共有されるべきである」という思想は、この悲劇的な経験に深く根差している。


逃亡した少年トレシュタスは、旅芸人の一座と出会い、その中にいた元サイジックのヘリアンドによって秘められた才能を見出される。やがてアルテウム島へ渡った彼は、サイジック会の指導者アイアチェシスから正式に学びを受け、「ヴァヌス・ガレリオン」の名を与えられた。

秘術師ガレリオン

アスグリム・コルスグレッグ 著



ヴァヌス・ガレリオンは血なまぐさい第二紀初頭にこの世に生を受け、トレシュタスと名づけられた。生まれながらにして、小貴族であるソリシチ・オン・カーのギャナッセ卿の屋敷に仕える農奴であった。トレシュタスの両親はごく普通の労働者だったが、父親はギャナッセ卿の掟に背いて読み書きを習得し、その息子にも学ばせた。ギャナッセ卿は、読み書きのできる農奴は自然への冒涜であり、貴族の立場をおびやかしかねないと聞かされていたため、ソリシチ・オン・カーの全書店を営業停止にしていた。ギャナッセ卿の敷地内をのぞいてすべての書籍商、詩人、教師は締め出されたが、それでもなお、小規模な密輸取引によってかなりの本や巻物が卿の目のとどかないところで流通していた。


トレシュタスが8歳のとき、密輸業者が捕まって投獄された。夫におびえる無学で敬虔なトレシュタスの母が密輸業者を裏切ったという説もあったが、他の噂もあった。密輸業者は裁判にかけられないまま、ただちに刑が執行された。ソリシチ・オン・カーでも数世紀ぶりの猛暑のなか、トレシュタスの父の死体は一週間も吊るされたままだった。


3ヵ月後、トレシュタスはギャナッセ卿の屋敷から逃げ出し、サマーセット島を半分ほど横切ったところにあるアリノールまでやってきた。トルバドゥールの一団が道端の溝にうずくまっていた瀕死の彼を発見した。看病によって回復したトレシュタスを下働きとして雇い入れると、彼に食事と部屋を与えた。トルバドゥールの一人である易者のヘリアンドがトレシュタスの精神力を試そうとしたころ、この恥ずかしがりやの少年は、その不遇ぶりにもかからわず、尋常ならざるほど聡明で洗練されていることがわかった。アルテウム島で神秘士としての訓練を受けていたヘリアンドは、トレシュタスにどこか相通ずるものを感じた。


巡業でサマーセット島の東端にあるポタンザ村を訪れたとき、ヘリアンドは11歳になっていたトレシュタスを連れてアルテウム島に渡った。その島の魔術師アイアチェシスはトレシュタスの潜在能力を認め、徒弟として受け入ると、ヴァヌス・ガレリオンの名を与えた。ヴァヌスはアルテウム島で体と心の鍛錬にいそしんだ。


魔術師ギルドの初代大賢者はこうして育てられたのであった。アルテウム島のサイジックからは訓練をつけてもらい、欠乏と不公平の少年時代からは知識の共有という彼の哲学を学び取ったのである。

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