サルモール
Thalmor
帝国にタロスを禁じた者たちは、なぜ内戦の長期化を望むのか。
サルモール(Thalmor)
帝国にタロスを禁じた者たちは、なぜ内戦の長期化を望むのか。
サルモールとは、第四紀にサマーセット諸島の政権を握り、第三次アルドメリ自治領を率いた、アルトマー(ハイエルフ)中心の政治勢力である。『The Elder Scrolls V: Skyrim』では、タロス信仰を取り締まる司法高官や、各地の有力者を宴に招く大使エレンウェンを通して、その活動を知ることができる。
アルドメリ自治領は彼らが治める国家であり、サルモールはその支配を担う組織の名である。また、この名は第四紀の政権よりも古い。第二紀の記録を開くと、同じ「サルモール」が、同盟諸民族の外交を担い、あるいはヴァレンウッドの王位継承に関わった者たちの名として現れる。
第二紀 ―― 同盟の外交官からヴァレンウッドの暫定政府へ
『The Elder Scrolls Online』の時代、女王アイレンの第一次アルドメリ自治領は、アルトマー、ボズマー、カジートの同盟だった。この時代のサルモールの仕事ぶりは、外交官に宛てた書簡や、同盟内に配られた通達に残っている。たとえばカ ジートとの接し方を説く通達は、猫にたとえた蔑称を使うことや、彼らの話し方をまねることを戒めている。異なる習慣を持つ者同士が、同じ陣営で暮らし、戦うための取り決めだった。
準軍事部隊「サルモールの拳」をめぐる内部書簡には、別の悩みが記されている。住民が部隊名を単に「サルモール」と略すため、兵の手荒な取り締まりが外交官の評判まで損ねているというのだ。役人の目から見た職務の区別と、取り締まりを受ける住民から見た同盟の姿には、すでに隔たりがあった。
第二紀830年、ヴァレンウッドでカモラン王朝の後継者争いが起こる。帝国側の『帝国ポケットガイド』初版によれば、ある派閥が西シロディールのコロヴィア人に領土と引き換えの支援を求めると、サマーセットのアルトマーも介入した。彼らは古い条約を根拠に別の候補アナクセメスを擁立し、その名において暫定政府「サルモール」を設置した。これが第二次アルドメリ自治領の成立につながる。後世まで受け継がれたのは組織の名であり、それぞれの時代で誰を代表し、どの土地を治めたかは異なる。
オブリビオンの動乱とサマーセットの政変
第三紀末、サマーセット諸島にもオブリビオンの門が開いた。デイドラの侵攻を受け、アルトマーの学問と権威の象徴だった水晶の塔が崩壊する。危機のさなか、それまで有力ながら少数派だったサルモールに、島を守るための権限が集まった。
この時期については、誰の記録を読むかで見える景色が変わる。帝国軍人が著した『大戦』は、サルモールの働きが諸島の全面的な制圧を防いだと評価する。一方、サンホールド出身のアルトマー、ラセニルが残した『高まる脅威』は、災厄が終わった後、彼らが人々の恐怖と安堵をどう政治的な支持に変えたかを告発している。島々の防衛に貢献したことと、オブリビオンの動乱そのものを終わらせたことは、別々の出来事として読む必要がある。
第四紀22年、サルモールはサマーセットの実権を掌握し、国名をアリノールに改めた。第四紀29年にはヴァレンウッドでも現地の協力者が政府を転覆し、アリノールとの統合を宣言する。こうして第三次アルドメリ自治領が成立した。サルモールを批判したラセニル自身もアルトマーである。サマーセットで政権を握った者と、その支配下に暮らした人々との違いは、彼の証言にもっともよく表れている。
消えた二つの月とエルスウェア
第四紀98年、夜空からマッサーとセクンダが消えた。月と深く結びついた文化を持つカジートにとって、二つの月が見えなくなった「虚無の夜」は、とりわけ深刻な出来事だった。二年後、月が再び姿を現すと、サルモールは古来の魔術で月を取り戻したと発表した。
本当に月に働きかけたのか、それとも帰還の時期を知っていたのか。『大戦』の著者も答えを持ち合わせていない。一方で、救世主と目された自治領の影響力がエルスウェアで増した経緯は記録されている。第四紀115年、政変によってエルスウェア連邦が解体され、復活したアネクイナとペレタインの二王国は自治領の従属国となった。ヴァレンウッドとの統合とは異なり、ここでは二つの王国を存続させたまま勢力圏に組み込んだのである。
大戦 ―― 帝都に運ばれた荷車
第四紀171年、サルモールの使節は覆いを掛けた荷車を伴って帝都に現れた。皇帝タイタス・ミード二世に突きつけた要求には、莫大 な貢納、ブレイズの解散、タロス信仰の禁止、ハンマーフェルの領土割譲が含まれていた。皇帝が拒むと、使節は荷車をひっくり返した。床に転がったのは、サマーセットとヴァレンウッドで活動していたブレイズの工作員百人以上の首だった。帝国が開戦を知った時には、敵地で情報を集める者たちはすでに失われていた。
自治領軍はシロディールとハンマーフェルへ侵攻し、第四紀174年に帝都を占領する。翌175年、皇帝は「赤輪の戦い」で帝都を奪還したが、戦闘を続けられる兵は大きく減っていた。帝国と自治領は同年、白金協定を締結する。帝都に帝国旗が戻った一方、帝国の民がどの神に祈れるかについては、サルモールの要求が通った。
ハンマーフェルでは別の結末を迎えた。南部の割譲を拒む同地に対し、皇帝は講和を維持するため、帝国の属州としての地位を放棄した。レッドガードはさらに五年間戦い、第四紀180年の第二次ストロス・エムカイ条約で自治領軍を撤退させる。サルモールは南部を確保できなかったものの、帝国とハンマーフェルの間には深い不信が残った。
なぜタロス信仰を取り締まるのか
タロスは、タムリエルを征服して帝国を築いた人間の皇帝タイバー・セプティムが、死後に神として崇められた姿である。九大神の一柱としてタロスに祈ることには、人間が神々の列に加わり得るという意味がある。エルフの優越を説く第四紀のサルモールにとって、タロスは神として認めがたい存在であり、同時に人間の帝国が大陸を統一した歴史そのものを想起させる存在でもあった。
この教義の対立が一人の暮らしにどう及ぶかは、マルカルスを訪れると分かる。サルモールのオンドルマールは、吟遊詩人オグマンドがタロスを信仰していると疑い、その証拠を探すよう旅人に依頼する。彼が欲しがるのは、オグマンドが自宅にしまっているタロスのアミュレットだ。帝都で結ばれた講和条約は、スカイリムの一市民が家に何を置いているかにまで及んでいる。
大使館の宴と、ブレイズを追う者たち
第四紀201年、ソリチュード近郊のサルモール大使館では、第一特使エレンウェンがスカイリムの有力者を宴に招いている。クエスト「外交特権」で客として大使館に入ると、華やかな広間の奥には尋問の場があり、ブレイズの生 き残りに関する調査記録が保管されている。
記録の一つは、かつて自治領での工作に携わったデルフィンを、逃亡を続ける重要な標的として扱う。別の記録で追われているのは、ドラゴンの伝承に通じたエズバーンだ。デルフィンがドラゴン復活への関与を疑って大使館を探らせたのに対し、当のサルモールもまた、何が起きているかを突き止めようとしていた。双方が相手の手を疑うこの食い違いに、大戦後も続く諜報戦の姿がにじむ。
大使館の外にもその手は及ぶ。北岸のノースウォッチ砦には、ホワイトランのグレイ・メーン家の息子ソラルドが囚われている。サルモールの活動を知るもう一つの入口は、政庁でも戦場でもなく、行方の分からない息子を捜す家族のもとにある。
ウルフリックの調査記録が明かす内戦の意味
大使館に残された文書の中でも、とりわけ慎重に読みたいのがウルフリック・ストームクロークの調査記録である。大戦中、捕虜となったウルフリックの尋問を担当したのは、後の第一特使エレンウェンだった。サルモールは彼の供述が帝都陥落を招いたと思い込ませ、その後、逃亡を許した。文書によれば、実際には彼が口を割る前に帝都は陥落していた。
戦後には再び接触があり、サルモールはマルカルス事件を自分たちに有利な出来事と評価している。ただし、文書が作成された時点でのウルフリックの扱いは「非協力的」「休眠中」である。彼を利用価値のある人物と見ていたのは、あくまで文書を書いた側だ。ウルフリックが彼らに忠誠を誓い、その命令で反乱を始めたことを示す記述はない。
むしろ、彼らの望みをもっとも明確に語るのは、文書の末尾にある作戦上の指示だ。ヘルゲンでウルフリックが処刑されれば帝国の勝利が近づくため、それは避けたい。しかし、ストームクロークが勝つことも避けるべきだという。タロスを禁じた勢力にとって、その禁令に反旗を翻した指導者は、生きて戦い続けるかぎり役に立つ。スカイリムの人々がどちらの旗を掲げるかを争う間、サルモールが見ていたのは、その戦いがいつ終わるかだった。
