top of page

タロス

Talos

帝国を築いた皇帝は、なぜ祈ることさえ禁じられたのか

タロス(Talos)

タロスは、タムリエルを統一した初代セプティム皇帝タイバー・セプティムが、死後、神々の列に迎えられた姿である。帝国の人々は古来の八大神に彼を加えて「九大神」と呼び、戦いに臨むときも、民を治める者の務めを説くときも、その名を口にした。ところが第四紀には、皇帝自身が結んだ条約によってタロスへの礼拝が禁じられる。『Skyrim』の時代、人前で「九大神にかけて」と誓うことには、どの神々を信じ、帝国のどの決定に従うかという二重の意味があった。


八大神に加わった、人間の英雄神

帝国の伝承によれば、タイバー・セプティムは第二紀末にタムリエルを一つの帝国にまとめ、第三紀の始まりを告げた。第三紀38年に皇帝が没した後も、人々は彼を帝国の守護者として仰いだ。八大神が世界の始まりに結びつく神々であるのに対し、タロスには皇帝として生きた時代があり、軍を率いて戦った土地があり、身につけた鎧まで残っている。帝国の民にとって、自分たちと同じ歴史を歩んだ人間に祈ることが、九大神信仰の際立った特徴だった。

タロスが司るのは戦争と統治である。九大神の教えをまとめた書物『Ten Commands: Nine Divines』では、タロスは信徒に、いざ戦うときのために強くあれ、敵と悪にひるまず、タムリエルの民を守れと教える。征服者を祀る神の戒めが、最後には「誰を守るのか」を問うところに、帝国が後世に伝えようとした皇帝の理想像が見える。


北方の竜イスミールと「嵐の冠」

シロディールで皇帝として記憶された人物は、スカイリムでは「北方の竜」イスミール(Ysmir)としても語られる。ゲーム内書籍『帝国内の様々な宗派』は、イスミールをタロスのノルドにおける姿と位置づけている。伝承の中で英雄は、グレイビアードの〈声〉を浴びながら、その予言を最後まで聞き届けた。それ以来、彼を目にした多くのノルドには、その姿に竜が重なって見えたという。

「タロス」という名そのものにも、生前の戦場に由来する伝承がある。異説を伝える書『アークチュリアン異教』では、のちの皇帝はハイロックのアルカイア出身の若者ヒャルティとして登場する。オールド・フロルダンの戦いで、嵐が彼を敵の矢から守り、城壁がその〈声〉の前に崩れた。ノルドの味方が彼に贈った名が「タロス」、すなわち「嵐の冠」である。この物語では、兵士たちが戦場で呼んだ名を、後の世の人々が祭壇で呼ぶことになる。

もっとも、同書はその嵐に古代の王ウルフハースを深く関わらせ、帝国建設の陰に宮廷魔闘士ズーリン・アークタスの働きと裏切りの物語を置いている。皇帝の出自さえ、アトモーラに起源を求める伝承とは一致しない。ヒャルティ、ウルフハース、ズーリンの三者からタロスの神性を読み解く解釈もあるが、同書が直接描くのは、帝国の英雄に帰せられた功績を誰が担ったのかという異伝である。三者の魂が一つになった瞬間を記録した書として扱うことはできない。


古びた硬貨と、皇帝の鎧に残った血

『Morrowind』では、神と人の距離が最も縮まる場面のひとつが、ゴーストゲートでの短い出会いとして描かれる。ダゴス・ウルのもとへ向かう主人公に、ウルフと名乗る帝国の老兵が、使い古した硬貨を一枚託す。受け取ると主人公には「皇帝の幸運」という力が宿る。のちに話を聞いた帝国教団の神託者は、老兵をタイバー・セプティムが仮の姿をとって現れたものと解する。ウルフ自身が神を名乗る場面はない。旅人に幸運を願った一人の兵士を何者と見るかは、その出会いの後に初めて問われる。

『Oblivion』では、タロスの神性が儀式の成否に関わる。マーティン・セプティムがマンカー・キャモランの楽園への門を開くには、「神の血」が必要だった。そこでクヴァッチの英雄がサンクレ・トールから持ち帰るのが、タイバー・セプティムの鎧である。皇帝が生前に流し、鎧に残した血は、実際に儀式の条件を満たす。後世の禁令を知る者にとって、帝国がかつて何を「神の血」と認め、それに救いを求めたかは重い意味を持つ。

同作の『九大神の騎士』では、第九の神が加わったこと自体が物語を動かす。古代の聖戦士ペリナルが戦った時代には、タロスはまだ生まれていなかった。後世の聖戦士は「タロスの祝福」を得ることで、ウマリルの肉体を倒した後、その霊を追って再び戦うことができる。八大神の時代から続いた戦いに決着をつけるのが、後から加わった神の力なのである。


白金協定は何を禁じたのか

第四紀171年、アルドメリ自治領は帝国にタロス崇拝の禁止などを要求した。皇帝タイタス・ミード2世は最後通告を拒み、大戦が始まる。帝都を奪回した帝国も戦力を大きく損ない、第四紀175年、皇帝は白金協定を結んだ。開戦前には拒んだタロス崇拝の禁止が、今度は和平の条件として帝国に課された。

争点は、タイバー・セプティムが実在したか、偉大な皇帝であったかではない。人として生まれた彼に神として祈りを捧げてよいか、という点にあった。自治領との連絡を担う帝国の役人が著した『タロス崇拝の過ち』は、皇帝の功績を称えながら、彼を第九の神に数えたことを帝国の過ちと説く。かたやホワイトランの説教師ヘイムスカーが讃えるのは、まさに人間の身から神へ昇ったタロスである。同じ生涯が、一方には崇拝を退ける理由となり、もう一方には祈りの根拠となった。


スカイリムでタロスに祈るということ

第四紀176年のマルカルス事件では、都市をリーチの民から奪回する戦いと引き換えに、ウルフリック・ストームクロークらがタロスを公然と礼拝する自由を求めた。局地的な約束も、帝国が自治領と結んだ条約に触れる。マルカルスで表面化したこの矛盾は、やがてスカイリムの独立を訴えるストームクロークに、人々が身近に理解できる大義を与えた。創建者への忠誠を祈りで示そうとする者が、現皇帝の法には背くことになったのである。

第四紀201年、その禁令が人々の暮らしにどう及んでいるかは、二つの街を歩くだけでも見えてくる。ホワイトランでは、ヘイムスカーがタロス像の前に立ち、道行く人々に信仰を呼びかける。一方、マルカルスでは、サルモールのオンドルマールが吟遊詩人オグマンドを信徒と疑い、その自宅から証拠を探すよう旅人に依頼する。探し物は武器でも反乱の密書でもない。身につけて祈るための、タロスのアミュレットである。

旅の途上、ドラゴンボーン自身もタロスの祠に祈ることができる。その祝福は、シャウトを放ってから次に〈声〉を使えるまでの間隔を縮める。グレイビアードの声に耐えた「北方の竜」の伝承が、ここでは旅人の身に宿るささやかな加護として息づいている。

関連する書籍

ゲーム内の書籍からさらに深く知る

ドラゴンボーンの書

ドラゴンボーンの書

皇帝の血統と竜の伝承から、ドラゴンボーンの謎を追う

大戦

大戦

帝都を奪還した帝国は、なぜ過酷な和平を選んだのか

bottom of page