アーケイ
Arkay
産声を守り、死者を死霊術から護る神アーケイ
アーケイ(Arkay)
アーケイは、タムリエルで誕生と死の巡りを司るとされる、帝国八大神の一柱である。タロスを含めて九大神と数える信仰でも、その一角を占める。スカイリムで彼の名をよく耳にするのは、街の「死者の間」だ。そこでは司祭が遺体を葬り、遺族を慰め、墓を守っている。だが、アーケイの司祭が人に最初の祈りを捧げるのは、葬儀よりもはるかに早い。教団には、生まれたばかりの子の魂を守るための儀式がある。
誕生、臨終、埋葬を守る三つの儀式
ゲーム内書籍『The Consecrations of Arkay』は、アーケイに仕え始めた修練者に向けて書かれている。そこに記された司祭の務めは、肉体に宿る魂も、肉体を離れた魂も守ることだ。教団は人の一生の三つの節目に、それぞれ異なる加護を授ける。
儀式 | 授ける時 | 教団が守るもの |
アーケイの恩寵(Arkay’s Grace) | 誕生時 | 子が自らの意思で選択できる年齢に達するまで、その魂を守る。 |
アーケイの祝福(Arkay’s Blessing) | 臨終の時 | 死にゆく者の魂が、本人の同意なく利用されるのを防ぐ。 |
アーケイの法(Arkay’s Law) | 死後 | 遺体が術で起こされ、他者への隷属を強いられるのを防ぐ。 |
臨終の祝福と埋葬の儀式が分かれているのは、魂を奪うことと、遺体を操ることが、それぞれ別の脅威だからである。魂がどこへ行くかを変えようとする者がいれば、残された骨や肉を働かせようとする者もいる。タムリエルで墓を守る司祭には、故人を悼むとともに、その死後の自由を守るという務めがある。
死霊術師 がアーケイを敵と呼ぶ理由
死霊術師の側からこの教えを語った文書が『Arkay the Enemy』である。著者のマニマルコは、正しい儀式で埋葬された者の遺体には、配下の術が及ばないと説く。彼の見立てでは、魂を守る「祝福」には術者が付け入る余地がある一方、遺体を守る「法」は揺るがない。
そこでマニマルコが学識ある弟子に命じるのは、司祭の評判を落とし、埋葬の作法を迷信と思わせることだった。人々が葬礼をやめれば、死霊術師はアーケイの法そのものを破る必要がない。この文書では、墓地で故人のために祈るという日常の営みそのものが、死霊術に対する防壁として描かれている。
アーケイはかつて人間だったのか
『The Elder Scrolls II: Daggerfall』の書物『Ark'ay, the God of Birth and Death』では、アーケイは本を集めるのが好きな一介の商人として登場する。ある日、彼は生と死の意味を説く難解な書物を手に入れた。読み解くのに夢中になり、店も家族も顧みないうちに、街で流行していた疫病に自らも倒れてしまう。
死の床で彼が母神マーラに願ったのは、本を理解するための時間だった。マーラが示したのは、今ここで死を受け入れるか、神々の一柱となり、現世の誕生と死の均衡を永遠に保つかという選択だった。しかも、神になった後も、自分の判断が正しかったかという苦悩は続く。アーケイはその務めを引き受けた。生と死の答えを本に求めた男が、今度はその問いを永遠に背負うという物語である。
一方、八大神の教会は、第一帝国の成立に際して聖アレッシアが民に示した神々は、それ以前から人々を見守っていたと教える。商人の昇神譚、帝国教会の教義、そして諸民族の信仰に起源を求める学説は、作中でも異なる立場から語られている。
エルフ、ノルド、レッドガードの伝承との関係
タネスの学者シナバーは『Tu’whacca, Arkay, Xarxes』で、帝国のアーケイに、エルフの神ザルクセス(Xarxes)と古代アトモーラの死の神オルケイ(Orkey)の特徴が合流したという説を検討している。彼女が手掛かりとしたのは古い葬送歌だった。そこでは、死者の魂を導くよう呼びかけられる神が、双方の伝承に見られる性質を備えて いるという。
ザルクセスはエルフの生涯と血統を記録し、今を生きる者と祖先とのつながりを保つ。ヨクーダに由来する魂の神トゥワッカ(Tu’whacca)は、レッドガードの死者が死後の地「遠き岸」へたどり着けるよう助ける。そしてヴァレンウッドのウッドエルフには、ザルクセスとアーケイの双方を敬う伝統がある。役割の似た神々が実際に同じ存在なのかについては、シナバー自身、史料から答えを出せる範囲を超えるとしている。
モラグ・バルと最初の吸血鬼
スカイリムの書籍『オプスカルス・ラマエ・バル』は、吸血鬼の起源をアーケイへの挑戦として語る。デイドラ公モラグ・バルは、人間とエルフの死を司るアーケイを傲慢と見なし、ネードの女性ラマエを襲った。やがて葬送の火から立ち上がったラマエは、自分を弔おうとした人々に襲いかかる。
葬火は本来、死者を見送る場である。その火の中から死者が戻り、生者の命を奪うという逆転に、この伝承の恐ろしさがある。書物は吸血鬼の出現を、生と死の巡りに対してモラグ・バルが刻んだ、後の時代に も消せない傷として描いている。
スカイリムの「死者の間」で出会う人々
ホワイトランのアンドルスは、死者の間を預かるアーケイの司祭である。地下墓地で失くしたアミュレットは、彼にとって司祭の身分を示す品であり、神の力を行使するために必要なものでもある。地下から動き回る死者の気配を聞きながら、自ら取りに戻れずにいる彼からは、死者を守る側の人間もまた恐れを抱くことがうかがえる。
ファルクリースのルニルは、街の墓地を預かるハイエルフの司祭である。各地の戦で命を落とした者が葬られてきたこの街では、墓地が住民の暮らす家々にまで迫っている。大きな霊廟を持つ余裕はなく、故人は屋外に眠る。そのそばにある小さな死者の間に、アーケイの祠が置かれている。
リフテンのアレッサンドラは、父から祈りと埋葬の作法を習った。彼女によれば、アーケイの司祭は修練を終えると儀礼用の短剣を授かる。だが父は、娘が修練を終える前に亡くなってしまった。正式に司祭となった後も父の短剣を持ち続けていた彼女は、それを父の亡骸のもとへ返したいと願う。幾人もの死者を送ってきた司祭にとって、一振りの短剣を葬ることが、自分の父を見送るための儀式となる。
