アリクル砂漠
Alik'r Desert
朝露で渇きを癒やし、レッドガードが祖先を弔うアリクル砂漠
アリクル砂漠(Alik'r Desert)
アリクル砂漠は、タムリエル西部、ハンマーフェル北西部のイリアック湾南岸から内陸へ広がる大砂漠である。海辺には港町センチネルと肥沃な耕地があり、その背後には、砂に埋もれた遺跡やヨクーダの英雄たちが眠る聖域が点在する。『The Elder Scrolls V: Skyrim』でホワイトランを訪れる「アリクルの戦士」の名は、この地方に由来する。
砂漠の地理と、水を集める人々
アリクルを海から訪れる者と、内陸から横断する者とでは、目にする景色が大きく違う。イリアック湾には船が停泊できる入り江があり、センチネルの近郊では作物が育つ。ところが内陸に入ると、風で姿を変える砂丘や乾いた岩場が続く。『The Elder Scrolls Online』では、この一帯は西からミルクワサ(Myrkwasa)、ホロウ・ウェイスト(Hollow Wastes)、ティゴヌス(Tigonus)の三地域に分かれている。
海に近い集落でさえ、飲み水を得るには工夫がいる。各地に水を運ぶほどの川に恵まれないアリクルでは、ジョハド(johad)と呼ばれる集水設備を使い、乏しい雨や朝露を貯水池に集める。レイン・キャッチャーの集水場には、何代にもわたって設備を守ってきた一 家がいる。貯めた水に異臭が生じ、砂漠の甲虫が群がる事件は、ひとつの水場の異変が住民の暮らしをどれほど脅かすかを物語る。
旅の足として頼りになるのはラクダである。作中の旅行者ファドゥス・ファルトは、コザンセット近くでアシャバーの隊商と一週間以上を過ごし、ラクダの扱いを教わった。砂の上で長い距離を稼げるのは、厚い肉球を持つ足のおかげだという。旅に慣れた彼も、ラクダに信用されるまでは、その歯と唾に用心しなければならなかった。
ヨクーダの船乗りが見つけた港、センチネル
レッドガードの祖先は、西方のヨクーダから海を渡ってハンマーフェルへ移り住んだ。第一紀の移住と征服で先陣を切った人々は「ラー・ガーダ(Ra Gada)」と呼ばれる。作中書籍『Sentinel, the Jewel of Alik’r』は、彼らが良港と水場を求めて海岸を進んだ時代に、センチネルの起源をたどっている。
その語りによれば、ヤグーブ(Yaghoub)率いる船団がイリアック湾へ入ったとき、停泊に適した入り江を最初に見つけたのは、船上の見張りだった。そこでヤグーブは発見者にちなみ、この港を「センチネル」、すなわち「見張り」と名づけたという。砂漠を代表する都市の名に、海からこの地を見た人々の記憶が残る。
第二紀582年を描く『The Elder Scrolls Online』では、センチネルはファハラジャード王が治めるダガーフォール・カバナントの拠点である。宮殿と港を持つこの都市の地下には、王が守る宝物庫がある。その奥に収められているのは、砂漠に葬られた死者の安息に関わる三振りの剣である。
トゥワッカの信仰と、祖先に剣を向ける禁忌
レッドガードの信仰において、トゥワッカ(Tu'whacca)は死者の魂を来世「遠き岸(Far Shores)」へ導く神である。砂漠に伝わる葬送の祈り『Tu’whacca’s Prayer』では、亡くなった女性が星々の道を進み、剣を傍らに置いて、敬われる祖先のひとりとなれるよう神に願う。生前に帯びていた剣は、死後もその人とともにある。
この土地で死霊術が恐れられる理由は、死者が生者を襲うことだけでは説明しきれない。伝統を重んじる者にとって、祖先の遺体は魂が去ったあとも神聖であり、たとえ亡 者として立ち上がっても、刃を向ければその体を傷つけてしまう。死霊術師は、このためらいにつけ込むことができた。
その役目を引き受けたのが、砂漠を移動して暮らすアシャバー(Ash'abah)である。彼らはほかの者が手を下せない亡者を討ち、生者を守ってきた。一方、禁忌に触れる仕事ゆえ、救われる側の社会からも距離を置かれる。第二紀に危機が起きた際、ファハラジャード王は彼らの助力が欠かせないと認めながら、自ら接触することを避け、旅人を使者に立てた。
三振りの剣と第二紀の死霊術事件
アンセイ(Ansei)とは、ヨクーダの剣の伝統における「剣聖」の称号である。アリクルに伝わる三振りの守護の剣「Ansei Wards」は、マジャ、ラダン、ハレラという三人の剣聖が、自らの魂をトゥワッカに捧げて生み出したとされる。その加護が及ぶのは、神官の葬送の儀式を受けた遺体である。海で命を落とすなど、清められる機会のなかった死者は、三振りが守られている間も死霊術にさらされていた。
第二紀582年、死霊術師の一団「Withered Hand」は、センチネルの地下に坑道を掘り、宝物庫から三振りを奪った。これにより、儀式を受けて葬られた祖先までが脅かされる。トゥワッカの玉座ではウワファが埋葬された英雄たちを起こそうとし、ターヴァの祝福ではアラサンが守護の剣を自らのリッチ化に利用しようとする。そしてモタリオン墓地では、シリが父である死霊術師ストゥラの復活を試みる。三振りを取り戻す旅は、ひとつの盗難事件から始まり、砂漠の各地で誰がどのように弔われてきたかをたどる物語になる。
第四紀の大戦と「渇きの行軍」
第四紀171年、帝国とアルドメリ自治領の大戦が始まると、アリクル砂漠は軍勢の進退を左右した。ゲーム内書籍『大戦』によれば、ハンマーフェル南岸に侵攻した自治領軍の前に、数で劣る帝国軍団は砂漠を越えて退いた。この撤退が「渇きの行軍(March of Thirst)」である。翌年、生存者はハンマーフェル北部で再編され、ハイロックから来た援軍と合流した。
第四紀173年には、今度はアランネルヤ率いる自治領軍が砂漠を横断し、スカヴェン(Skaven)でデキアヌス将軍の帝国軍と衝突した。帝国側は撤退を余儀なくされたが、自治領軍もそれ以上進めないほどに消耗した。同じ砂漠が、大戦の初めには帝国兵の退路となり、のちには追う側の軍勢の進路となったのである。
『Daggerfall』と『Skyrim』で出会うアリクル
『The Elder Scrolls II: Daggerfall』では、イリアック湾を取り巻く諸地域のひとつとしてアリクル砂漠を訪れることができる。地図にはアリクラ(Alik'ra)をはじめとする町があり、砂漠にも多くの集落があることが分かる。第二紀の港や聖域、そこで暮らす人々の信仰を間近で描いたのが、後発の『The Elder Scrolls Online』である。
第四紀201年の『Skyrim』で主人公が出会うのは、故郷を遠く離れたアリクルの戦士たちである。ホワイトランで始まる「緊急事態」では、ケマツ率いる一団がレッドガードの女性サーディアを捜している。サーディアは自治領を批判したために命を狙われたと訴え、ケマツは彼女がタネスの町を自治領に売り渡したため、裁きを受けさせるのだと語る。どちらの言い分が真実かは作中で確定しない。ここで「アリクル」の名が指すのは、砂漠を故郷とする戦士の一団である。第二紀に亡者を討ったアシャバーとは、それぞれ別の名と役割を持つ。
関連する書籍
ゲーム内の書籍からさらに深く知る