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大いなる旅
大いなる旅
ウォーヒン・ジャース 著
ヴァララは美しくて、優しく、かわいらしく、賢く、可憐で、元気の良い少女だった。両親の望んだもの全てをもって生まれてきたような子だった。あまりにも完璧な子だったので、両親は彼女の将来に期待をせずにいられなかった。父親はマンセンという名の成り上がり者だったが、娘が将来位の高い人物と結婚するに違いないと信じており、帝都の王妃になるかもしれないとすら思っていた。母親はシネッタという気の弱い女性で、娘は自分の力で栄光を掴むだろうと思っており、偉大な騎士や魔術師になったヴァララを思い描くのだった。両親それぞれの期待は大きく、ときには娘の将来について言い合いになったりもした。しかし、どちらの予想通りにもならなかった。健やかに育つと思われた娘は、重い病にかかってしまったのだ。
どこの神殿につれて行っても、あきらめるように言われるだけだった。魔術師ギルドでは、ヴァララの症状が非常に珍しく、致命的で、効果的な治療法はないとまで言われた。彼女は近いうちに死ぬ運命にあるのだ。
帝国の権威ある施設が何もできなかったので、マンセンとシネッタは魔女や流浪の 妖術師、その他社会の闇に住む人々に望みをかけた。
「ひとつだけ、治してくれそうな場所がある」ロスガリアン山脈の人里離れた峰に住む薬草師は、訪ねて来た夫婦に言った。「オレンヴェルドの魔術師ギルドじゃ」
「でも、魔術師ギルドにはもう行ってみましたよ」と、マンセンは言った。「彼らは何もできなかったんです」
「オレンヴェルドに行け」と、薬草師はなおも言った。「そこへ行くことを誰にも告げずにな」


