骨 第1部 | The Elder Scrolls Library | 神楽殿
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骨 第1部

骨 第1部

タヴィ・ドロミオ 著

「思うんだが」フリンの奥底をしげしげとのぞき込みながらガラーツが言った。「偉大な考えは常に純然たる偶然から生まれる。例えば昨夜君に話して聞かせた、いとこの話がそうだ。もし馬から落ちなかったら、彼は決して帝国屈指の錬金術師にはなっていなかっただろう」



ミダスのキングズ・ハムに集う常連客は、その夜更け、例によってとりわけ哲学に熱弁を振るっていた。



「そうは思わないな」。きっぱりと、しかし礼儀正しくシオマーラが応えた。「偉大な考えや発明は、ほとんどの場合、勤勉と大変な努力を重ねてじっくりと形成されるものだ。先月話したことを覚えているかな。ある若い女性の話で、これは確かに実在の人物なんだが、実質的にノースポイントの全員と寝た後で、彼女はようやく心から愛する相手を見分けられたというんだ」



「どちらも違うだろう」。グリーフのマグに上積みを注ぎながらハルガードが言った。「最も偉大な発明は臨時の必要性があって創造されるものだ。ずっと前に話したんだが、覚えていないかな。アースリック・オアンと骨削の発明の話を?」



「君の理論の問題点は、例が完全に作り話だということだ」シオマーラが鼻であしらった。



「アースリック・オアンと骨削の発明の話なんて聞いた覚えがないな」ガラーツが眉をひそめ、「たしかに話したのかい?」



「まあ、本当にはるか昔のことでね。ヴァーデンフェルが麗しき緑の地で、ダンマーがまだチャイマーとドゥーマーで、ノルドがまずまず平和に共生していて、互いに殺し合おうなんて気はなかった頃の話だ」。ハルガードは椅子の上でゆったりと構え、さらに熱く主張を始めた。「その頃は太陽と月が空に仲良く浮かんでいて…」



「神よ、母よ、ウィザードよ!」シオマーラがぼやいた。「君の馬鹿げた話を再び聞かざるを得ないのなら、まず脚色はやめたまえ。必要以上に長くすることもだ」



これは君たちが名前を聞いたこともない王が治めていた時代のヴァーデンフェルで(話を遮ったシオマーラを無視して、尊敬に値する自制心を保ちながらハルガードが言った)、はるか昔に起きたことだ。アースリック・オアンはこの王に仕えた貴族の1人で、実につき合いにくい人物だった。王権に忠誠を誓う彼に王様は城と領地を与える必要性を感じたのだが、隣人になって欲しいとは必ずしも思わなかったから、文明社会から遠く離れた地を彼に与えた。それがちょうどヴァーデンフェルの中にある地域で、今日に至るまで、あまり文明化されたとは言いがたい場所だ。アースリック・オアンは壁を巡らせた要塞を築き、不運な奴隷たちを従えて定住し、静かな暮らしを楽しんだ。気味の悪い面はあるとしてもだ。



やがてすぐに要塞の完全性が試されることになった。ノルドの人食い部族が以前から谷に住み着いており、ほとんどの場合は仲間を順番に食べていたのだが、時折、彼らが黒肉と呼ぶところのダンマーを獲物にしていた。



シオマーラが感心して笑った。「いいねえ! その話は初めて聞くよ。ノルドの残虐なカニバリズムについての話は、久しぶりに聞いたよ」



さっきも言ったように、これは明らかにはるか昔のことで(文明的な悪意を持つ聴衆をにらみつけながらハルガードが言った)、多くの意味で事情が今とは大きく異なっていた。人食いノルドは野原でアースリック・オアンの奴隷を襲い始め、次第に大胆になって、ついには要塞そのものを包囲した。さぞかしおぞましい光景だったろう。肉を切り裂く目的で短剣のように歯を尖らせた凶暴な男女の大群が、巨大なこん棒を振りかざし、獲物の皮だけを身にまとって集ったのだから。



無視すれば立ち去るだろうとアースリック・オアンは考えた。

残念ながら、ノルドは、壁に囲まれた要塞へと流れ込む小川へ毒を入れることにまず取り組んだ。これが明らかになる前に、すべての家畜と大半の奴隷があっという間に死んでしまった。救出の見込みはなかった。少なくとも、王様の使者がこのつき合いにくい家臣に会うため嫌々やって来る数ヶ月後までは。次に近い水源は丘の向こう側にあったため、アースリック・オアンは3人の奴隷に空の水入れを持たせ、取ってこさせようとした。



要塞の門から数歩も進まないうちに、彼らはこん棒で殴り倒されて食べられてしまった。次のグループは、身を守るための棒を手に送り出された。彼らはさらに数歩進むことができたものの、やはり圧倒され、打ちのめされて、むさぼり食われた。より優れた自己防衛が必要なことは明らかだった。アースリック・オアンは、特定の才能や務めを持つ数少ない奴隷の1人である鍛冶と話をしに行った。



「奴隷が川に行って戻ってくるには鎧が必要だ」と彼は言った。「ありとあらゆる鋼と鉄くずを集めろ。蝶番、ナイフ、指輪、カップ。壁の堅固さを保つのに必要ないものはすべて集めて、溶かし、可能な限り優れた鎧を最大数作れ。大至急だ」



ゴーキスという名の鍛冶はアースリック・オアンの要求を聞き慣れており、鎧の質、量、製作のスピードに関して一切の妥協はないことも知っていた。彼は休むことなく30時間働き続けた。しかも、思い出してもらいたいのだが、かまと金床を相手に苦闘する彼の渇きを癒す水はなかった。そしてようやく、合金の鎧を6着作り上げた。



6人の奴隷が選ばれ、鎧を身にまとい、川の水を集める瓶を持って送り出された。最初のうちは、任務は順調だった。鎧をまとった奴隷はノルドにこん棒で襲われたが、攻撃を受け流して行軍を続けた。しかし際限なく続けられる攻撃に呆然となり、奴隷たちの足取りは次第におぼつかなくなってきた。結局、1人また1人と倒れ、鎧をはぎ取られて食べられてしまった。



「お前が作ったあの重い鎧では、奴隷は素早く動けなかったのだ」アースリック・オアンがゴーキスに言った。「毒で死んだ家畜を全部集めて皮をはぎ、可能な限り優れた鎧を最大数作れ。大至急だ」



腐臭を放つ家畜の死骸相手の任務は不快そのものだったが、ゴーキスは言われたとおりにした。皮の処理と加工にはものすごく長い時間が必要なはずなのだが、ゴーキスは休まずに働き続け、半日のうちに12着の皮鎧を作り上げた。



12人の奴隷が選ばれ、鎧を身にまとい、川の水を集める瓶を持って送り出された。最初のうちは、前回の遠征隊よりもずっと順調に進むことができた。2名はほぼ即座に倒されたが、他の者たちは運良く攻撃者の裏をかき、時折襲ってくるこん棒をかわすことができた。数人が川にたどり着き、3人が瓶を一杯に満たすことができ、うち1人は要塞の門に戻り着く一歩手前まで来ることができた。だがしかし、彼も倒れて食べられてしまった。ノルドの食欲は留まるところを知らなかった。



「奴隷が1人残らずいなくなってしまう前に」考え込んだ様子でアースリック・オアンがゴーキスに言った。「皮よりも丈夫で金属よりも軽い鎧が必要だ」



鍛冶はすでにそれについて考えていて、入手可能な素材を検討していた。石か木でどうにかできないかとまず考えたが、要塞をさらに壊すことになるという実際的な問題があった。要塞の中でその次に多くあるのは皮のついた死体、すなわち、筋肉、脂肪、血、骨の塊だった。6時間、彼は休まず懸命に働き続けて、史上初の骨削の鎧を18着作り上げた。アースリック・オアンはその見た目(と臭い)にやや懐疑的だったが、とにかく喉が渇いており、必要であるなら18人の奴隷を犠牲にしようという気になった。



「一つよろしいですか」ゴーキスが震えながら言った。「ノルドに立ち向かわせる前に、奴隷たちに鎧を着せて中庭で練習をさせてみてはいかがでしょう?」



アースリック・オアンが冷静にそれを許可し、奴隷たちは骨削の鎧を着て要塞の中庭を歩き回った。間接の弾力性、背甲の硬直性、肩と腰にかかる重量に、彼らは次第に慣れていった。バランスを維持するために足をやや斜めに着地させる方法、倒れずに身体を旋回させて素早く向きを変える方法、急に駆け出して急に止まる方法を、彼らはそれぞれ発見した。城の門から送り出される頃には、中程度の重さを持つこの鎧の扱いにかけて、彼らはほぼ完全な愛好家と言えるぐらいになっていた。



17人が殺されて食べられたが、1人は水の入った瓶を持ち帰ることができた。



「実にくだらない」とシオマーラ。「だがそれでも、我が論点はやはり有効だ。偉大なる発明家が皆そうであるように、たとえ作り話の中であっても、鍛冶は骨削を作り出すためにコツコツと働いたわけだから」



「偶然の要素も多分に盛り込まれているぞ」と眉をひそめてガラーツ。「だがおぞましい話だ。聞きたくなかったよ」



「おぞましいと思うなら」笑いながら言うハルガード。「それに続いて起きたことについても聞くべきだな」

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