アザレインの日記
調査はなかなか進まなかったが、それは予想通りだった。街の人々はそれぞれ自分の悩みを抱えていて、ステンダールの番人のことを気にかける者などほとんどいない。ここまでにつかんだことを書き記そう。頭が整理できるかもしれないからな。
私が調べたところ、フェンリクはデイドラ崇拝の噂を調べにドーンスターにやってきた。この教団が街で繰り返される悪夢の元凶だと思われる節があったが、果たしてそれが確かかどうかは定かでなかった。そしてある晩、フェンリクは姿を消した。宿屋の主人にも、街の人たちにも一言もなく。他の巡察隊員も姿を消し始めたのはその頃だった。彼らも忽然と消えてしまった。
手がかりは一つある。ある日宿屋の主人が、宿屋の裏で妙なものを見つけたのだ。ゴミを捨てようとした時のことだそうだ。それはエルフの短剣で、刃はまだ血で温かかった。そしてさらに調べると、毒が塗られていると分かった。
剣の造りからいろいろなことが読み取れる。恐らくこのデイドラの教団はエルフが始めたものなのだろう。さらに、エルフの武器は水銀で作られるもので、近くには鉱山もある。毒もまた、付近から調達したものかもしれない。この殺人犯が行動するのは夜だという可能性も高い。街の目が異教の崇拝に向けられてない時に。
そういうわけで、この剣の持ち主として3名が疑わしく思われた。ヴェレスというエルフは寒さをぼやきつつ残る気だ。鉱夫のハラルドは凶器を作った鉱石を加工している。最後に、旅人のイリーンは乳棒の経営者よりも錬金術に詳しそうだ。
3人とも夜型だが、私が尾行できるのは一度に一人だけだ。それでも、尾行は有益だ。礼拝所に導いてくれるか、容疑者から外れるかのいずれかになる。
だが、まずはメモを書き残した者に会わねばならない。短剣のことをよく知っているのかも知れないし、捜査を絞り込める情報があるのかもしれない。