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アノーラの日記



第三紀423年 暁星の月1日

ある賢い魔術師に言われたことがある。呪文の力は信念に宿るものだと。


大学が欲求や目的を完全に失い、現在の執政の下で無気力に陥っていることは間違いない。


アークメイジのシャリドールは、大学を魔術師たちが自分の能力の限界を試すための訓練所にしようと考えていた。だが今や、崇高な呪文や高尚な理想が朽ち果てるだけの、知識の墓場と化してしまった。


外界に自分たちの行動を左右されてはならない。無知にすり寄ることは美徳と言えない。予言者によると大戦が迫っている今、我々は全力を尽くして備えなければならないのだ。


だからこそ私は、ティール・ジャと共に去る決断を下した。前途多難であることは承知だが、我々にはやり遂げる信念がある。




第三紀428年 恵雨の月23日

塔の建設はほぼ完了した。ティール・ジャには焦りすぎだと非難されたが、基本的に私はせっかちなのだ。ティール・ジャはいつも亀で、私はいつも兎だ。だが今は状況が切迫している。来たるべき大戦は、漆喰が乾くのを待ってなどくれない。


建設が遅れているのはこの場所のせいだが、仕方のないことだ。ノルドは元々魔術に不信感を持っているため、我々の作業に眉をひそめる者もいるかもしれない。暴力的な行動に出る者すらいるかもしれない。そのため、扉には魔法を使わないと解けない結界を張っておいた。


我々はシャリドールに敬意を払うことにし、扉の外にも封印を施した。ティール・ジャは封印を火で燃やすという考えに満足しているようだったが、他の者たちはあまりよく思っていないようだった。彼らには、プライドが進歩の敵だと警告しておいた。来たるべき嵐の中で生き延びるには、伝統に縛られていてはならない。伝統を燃やさなければならないのだ。




第三紀429年 蒔種の月11日

建設が完了してから1年が経ったが、まだやるべきことが山積みだ。塔は防衛の基礎に過ぎない。我々の精神と魔術が城壁となるのだから、それを支えるために力を増強しなければならない。


だからこそ私はタムリエル中に斥候を遣わし、役に立ちそうな強力な秘宝を探しに向かわせた。ぬるま湯に浸かった大学の魔術師たちが、探すことを拒んだ秘宝だ。そしてモロウウィンドを捜索する中で、我々は伝説のアークメイジ、シラベインが身に着けていたウォーロックの指輪を入手することに成功した。


伝説によると、シラベインはこの指輪の力を使い、タムリエル中を脅かしていたスラシアの疫病を終息させたと言われている。この指輪は常に世界の命運を背負う定めにあるのかもしれない。




第三紀429年 降霜の月17日

特筆すべき秘宝はあれから見つかっていない。アルケイナエウムの記録から得た情報によれば、スカイリムにはゴールドールの杖を含め複数の秘宝があるはずなのだが。どうにかして全ての秘宝を見つけなければならない。


しかしそれよりも懸念すべきなのは、魔術師たちの士気だ。あのティール・ジャですら、紋切型と怠惰の罠に陥っているようだ。緊迫感がない中で、疲弊した者たちに別の遺跡を探索するよう説得することは難しい。




第三紀433年 南中の月29日

433年も半ばを過ぎ、我々が大学を去ってから10年以上が経った。しかし全ては至って平穏なままだ。新人の侍者の一人が修行をやめて料理人になろうかと言い出し、アップルパイの保存呪文をうれしそうに見せてきたほどだ。その侍者には戦闘魔法を学びにここに来たのであって、菓子を作るために来たのではないと言い聞かせておいた。菓子など、歳を取ってから思う存分貪ればいい。


だからこそ目的を忘れないように、書庫の半分も割いて、強力な秘宝の場所に関する書物を置いたのだ。だが本棚が埃を被っている様子を見ると、私は皆を堕落させてしまったのかもしれない。




このギルドのリーダーとして、私は戦闘訓練を受けているし、来たるべき事柄に関する知識も持っている。だが悲しいかな、必ずしもそうなるという信念は失われてしまった。




第三紀433年 収穫の月28日

配達人がシロディールからの知らせを持ってきた。セプティム皇帝が死んだそうだ。オブリビオンの門が開かれた。神々よ、助けたまえ。



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