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馬車の御者のメモ



それが起こったのは、山岳地帯深くに入ってしばらくしてからだった。誓ってもいいが、歌声が聞こえたんだ。音楽はなく、とても静かに、それでも歌っていた。誰も信じてくれなかったが、昨晩襲ってきたドワーフの機械に関係があることに有り金を全部賭けてもいい。あいつらが遺跡を離れるなんて聞いたことがないし、辺鄙なところまで旅人を追っかけてくるなんてありえない。まるで奴らは音楽に引き寄せられているかのようだ。


今晩、貨物をサドラスのキャラバンに引き渡すが、手放せてせいせいする。だが隊長は、最終的にホワイトランへ引き返すと言う。つまり、また貨物にお目にかかれるってわけだ。


そうなったら、もうこのキャラバンを抜けることにする。金なんてどうでもいい。何日も寝てないし、頭がおかしくなりそうだ。


今だって、頭の中で恐ろしい歌声が聞こえている。とにかくこいつを止めたいんだ。



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