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消えたキャラバンの衛兵のメモ



火山灰に紛れてスカイリムに侵入した。どこから見ても難民を脱出させようとしている流浪のキャラバンだ。怒れるレッドマウンテンから逃げようとする長い列の一隊でしかない。いつもならそれだけで通してもらえるが、今はそうはいかない。


キャラバンの警護を長いこと務めてきて、入念な警備を見てきた。錠前、鎖、その他の工夫。召喚士にデイドラを呼び出させて馬車を守らせた依頼人もいるが、それに比べてもこいつは行き過ぎてるように思える。


第一に、全てコードネームがついている。荷車、衛兵、馬まで。キャラバンには、覚えやすいように大家の名前がつけられた。


もちろん、衛兵の中にはそれを嫌う者もいた。ドレス家と呼ばれるくらいならグアルに跪いたほうがマシだという新米もいた。だがイネドス隊長が剣の切っ先でそいつに言うことをきかせ、他もそれに従った。赤い年だし、みな団結しそうなもんだが、癒えていない古傷と清算されていない過去があるようだった。もっとも、そんなことはどうでもいい。あくまで仕事なんだ。隊長が言ったように、クズにちなんだ名前をもらわなかったのをありがたく思おう。

その上おとりのキャラバンまでスカイリム中に出発させていた。その全てがハンマーフェルの秘密の場所まで行くことになっていた。だがそれでもまだ不十分だとばかりに、各キャラバンを事前に決められたチェックポイントで合流させ、荷を交換させた。


つまりいかなる時でも、それぞれのおとりがそれぞれの道を進んでいる。難民のいでたちで人目を避けられると彼らは言っていたが、万が一の場合に備え、隣の村に走る伝令、隠し部屋、考えつくものは何でも用意してあった。


だが私に言わせれば、全て時間の無駄だ。私は学者じゃないが、この安っぽい貨物はそう大層なものに見えなった。哀れな奴の頭蓋骨を叩き割るしゃれた道具でしかない。


ヴァーデンフェルから混乱が広がる中、我々はかすり傷ひとつ負わずにウィンドヘルムへ到着した。朝がくれば川を沿って西へ、宿屋「ナイトゲート」方面に行く。うまくいけば、昼には山道へ着くだろう。あちこちで止まることがなければ、もっと早く到着できるんだがな。



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