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エスラエルの日記



好きで孤独になったわけじゃない。魚は好きで泳いでるわけじゃないし、鳥も好きで飛んでるわけじゃない。ただそういう生物なだけで、それは俺も同じだ。


衛兵に隠れ家を襲われた時も、涙一つ流さなかった。俺たちはいつも迷子で、お互いを見放してるとまでは言わなくても、世界から見放されてた。


他の奴らは街に逃げたが、俺は森の静けさを求めた。月と星だけが俺に寄り添ってくれてた。だけどあの日、あのオオカミに出会った。


熊の罠に足を引っかけてるのを見て、最初は殺して楽にしてやろうかと思った。だけどちょっとした出来心で、傷を治して回復するまで餌をやることにした。


なんで助けてやったのかわからない。まだどこかで他人が恋しくて、仲間が欲しかったのかもしれない。


孤独には慣れてる。もう何年も誰にも頼らず、一人でやってきた。だけど結局、俺は何も変わってないみたいだ。孤児院の窓から誰もいない通りを見つめてた、あの頃から。



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