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盗賊のメモ



フォックスは頭巾を被り、自らを忘れ、新たな人生を始めたと言われている。


だが、忘れているのはむしろ私の方だ。会う度に彼の記憶がなくなっている。彼じゃなくて彼女だっただろうか?


そんなことはどうでもいい。私はある物乞いの女に彼の言葉を伝えた。「影と共にあれ」と。その物乞いが渡して来たメモを読んで、私の疑念は裏付けられた。グレイフォックスは死んでいる。彼の墓石を目にした今、彼の時代が終わったことは間違いない。あの頭巾も受け継がれるだろう。


次にあの頭巾を被るのは私だ。そうすれば大金持ちになって、思い出など必要なくなる。新しい思い出を買えばいいだけだ。



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