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ニヴェノールの日記
夫の善人面にはほとほと嫌気がさしてたけど、今まではお金の問題に過ぎなかった。あの晩、夫は見知らぬ人物を夕食に招いた。
その人物は妙な男で、物忘れが激しく、やたらに周囲を見回してた。私の胸元を見てるのか首のアミュレットを見てるのかわからなかったけど、とにかくじっと見つめていた。いい気分がまったくしないでもなかったけど、夫の目の前で浮気をするつもりはなかった。
それに、あの男が見つめてるのは私なんかじゃなかったことがわかった。私の後ろにあった不気味な人形について尋ね、子供を作る予定があるのかと聞いてきたのだ。
子供を作る予定はなく、人形はボリーが無償で引き取った子供のためのものだと説明した。ソリチュードのエリクールが、私には理解しがたい理由で子供を引き取ってほしいと言ってきたのだ。あの汚らしい子供とは関わりたくないとボリーに言ったけど、情に流された夫は頑なに聞き入れなかった
幸い、あの晩の夕食から数日後、その子供はいなくなってくれた。いちいち心配するほど私はバカじゃない。