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見知らぬ者の日記



灰色頭巾の呪いにかかると自分という存在が奪われ、歴史から完全に存在を抹消されると言われている。


だが、その呪いははるか昔に解かれていた。実のところ、私の人生を奪ったのはノクターナルじゃなかった。自分自身の身勝手さだ。


私は単に、強欲ゆえにあの頭巾を被った。家族を捨てたのも、自分だけが大事だったからだ。


それから姉妹が亡くなり、甥は孤児になった。アイスブレードの最後の一人となって財産の相続人となり、狼たちの格好の的となったのだ。


あの子が危険に晒されている今、一族の長として責任を取らなければならない。だがあの子の父親となるなら、見知らぬ者であることをやめるしかない。頭巾を他の者に譲り、グレイフォックスを殺さなければならないのだ。


それまでは毎晩花束を手にこの墓にやって来て、姉妹に許しを乞わねばならない。



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