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ヴェリックのメモ



月曜に、雨が降る中港の外れでシシェル・ガサリアンに会った。あれを兆しだと捉えるべきだった。


ガサリアンとは以前にも仕事をしたことがあった。黒魂石や死体を密輸し、大の男が寝床を共にするような類の後ろ暗い行為を行ってきた。だが、今回は違った。大物だった。


ガサリアンに、それまで見たこともなかったような剣を手渡された。スローターフィッシュのような歯を持ち、中央には血のように真っ赤な宝石が施されていた。唯一無二の剣に違いないと言うと、ガサリアンはほほ笑み、もう1本あると答えた。


俺の任務は、その2本を取り替えることだった。


最後に硬貨を1枚手渡され、後でさらに支払うことを約束された。あの魔術師は、1週間後に連絡をよこすと言っていた。隠れ家を使ってどこかの隊長とやらを殺すため、ガサリアンの仲間が金をくれるという話だった。俺はその後で2本の剣を取り替えることになっていた。


他の魔術師には秘密にしろと言われて気は引けたが、細かいことはどうでもよかった。台帳の数字だけが大事だった。


数ヶ月後、取引が台無しになった。魔術師たちは自分の魔法を見くびっていたし、俺たちも欲をかきすぎた。そして、愚かさのツケが回ってきた。


何人かは戦って切り抜けようとしたが、奴が死ぬことはない。もはや死ぬことができないのではないかと思い始めている。しかも奴に殺された者が全員奴の仲間として蘇っているせいで、倒すのはより困難になっている。


自分自身を責めるしかなさそうだ。最初から直感を信じるべきだった。魔術師の仕事はいつも胡散臭いが、今回は特に怪しかった。だが黄金に目がくらんだばっかりに、自分や仲間にムーンシュガーのような話だと信じ込ませてしまった。


妙な話だが、もはや血の渇きが失われてしまったようだ。ファルダーズトゥースの穴で完全に失った。もう片方の剣を手に入れさえすれば、魔術師どもやガサリアンを殺せると思っていたからだ。だが呪文が失敗し、ギルドは隊長をこの部屋に封じ込めた。俺たち共々だ。


今や俺には、化膿した傷と空腹と、その証の魔術師の硬貨しか残されていない。


おそらく、ここから外に出られるものはこの硬貨だけになるだろう。この硬貨がたくさんの物語を語ってくれるはずだ。


この硬貨は、大勢の命を買った。


たくさんの夢を売り、たくさんの血を流した。


この硬貨は間違いなく呪われている。にも関わらず、なぜか、手放すことができない。



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