top of page
不死の血
不死の血
著者不明
月も星も姿を隠していた。特別静かな夜がいっそう沈んで感じた。街の衛兵は松明なしには巡回もままならなかった。だが、私の聖堂を訪ねてきた男は灯りを携えてはいなかった。やがて気づいた。モヴァルス・ピクインは夜でも昼と同じように見ることができる。素晴らしい才能だった。彼がことのほか夜行性であることを考えたら。
侍者のひとりに連れられてやってきた彼を見たときに、まず、すぐにでも治療しなければと感じた。青白いどころかオパールのような顔色をしていた。耐えがたき苦しみに襲われ、かつての男ぶりの良さが抜け落ちてしまったような顔だった。目のまわりにできたくまが疲労の激しさを伝えていたが、瞳そのものは鋭く、真剣であった。
私の懸念を感じ取ったかのように、彼はすぐさま自分は病気ではないと告げた。それ以上、突っ込んで話そうとはしなかったが。